子供を転校させるのがかわいそう
次は単身赴任になるのが辛いなあ
引越しが多すぎてもう疲れてきた
世の中に転勤族は多い。労働政策研究・研修機構の「企業の転勤の実態に関する調査(https://www.jil.go.jp/institute/research/2017/174.html)」によると、正社員の転勤がどのくらいあるかについて以下のような結果が出ています。
転勤がどのくらいあるか
- 正社員のほとんどが転勤の可能性がある 33.7%
- 正社員でも転勤をする者の範囲は限られている 27.5%
- 転勤はほとんどない 27.1%
つまり全体の6割が転勤の可能性があるというのです。割合は企業規模が大きくなるほど高くなる傾向が出ています。転勤させる理由は社員の人材育成のため、あるいは処遇、人事ローテーション、組織活性化などのためでした。
一方で民間の調査では、「転勤のない企業を希望する」と回答した20代が8割に迫るというデータもあります。※PRTIMES 転勤のない企業を希望する20代が8割に迫る(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000879.000013485.html)
僕自身もこれまで約25年のサラリーマン人生の中で、転職を挟んで転勤を7回経験してきました。子供が中学生になり、そろそろ単身赴任が間近に迫っている状況です。
現状では進んで転勤したいとは言えません(笑)
この記事では転勤はそもそも拒否できるのか、あるいは避けることはできるのかについて解説します。
結論をいえば、転勤が前提の会社で転勤を拒否すれば、就業規則に反する可能性が出てきます。
ただ、しっかり正当な理由を伝えている場合や日ごろから上司とコミュニケーションをとっていれば、望まない転勤は避けられる可能性があるのもまた事実。実際、僕は自分の意に沿わない転勤は避けることができていますし、そのような同僚が大勢います。
どのように望まない転勤を避けるのか。そして避けられない場合はどのような手段があるのかを紹介します。やはり転勤は避けられないけど転勤をしたくない場合には転職もひとつの方法。どんな仕事が考えられるかも解説します。
記事を読み終えると、突然の転勤辞令に驚かずに対処できるようになります。希望しない転勤を避け、豊かな会社員ライフを送りましょう。
「転勤したくない」と拒否できるか
就業規則に定められていると基本的に拒否できない
転勤とは転居を伴う人事異動のことを指します。通常は会社ごとの就業規則で関連規定が定められており、規則を受け入れて入社している以上、転勤を拒否することはできません。
逆に言えば全く就業規則で規定がなければ拒否できるといえます。
不当な転勤命令だと感じた場合は就業規則を確認し、「転勤を命ずることができる」といった文言があるかどうか確認しましょう。
また、仮に就業規則に転勤させられる旨が明記されていても、その転勤が不当なものであれば拒否できます。
労働契約法第3条5項
「労働者及び使用者は、労働契約に基づく権利の行使に当たっては、それを濫用することがあってはならない」
つまりその異動に業務上の必要性がなかったり、不当な報復人事であったり、従業員に不当な不利益となる異動であったりする場合には、拒否できる可能性があるのです。
転勤を断ると懲戒処分の恐れも
就業規則に転勤があることが明記され、さらに不当性もない場合に転勤を拒否していると、懲戒処分となる恐れがあります。
最悪の場合は解雇となる場合もあるので、拒否する場合は慎重な検討が必要です。
就業規則に定められている会社で転勤を拒否できるのは、会社側が人事権を濫用した場合になります。
- 業務上の必要性があるか
- 会社側に不当な動機があるか
- 従業員に過度な不利益がないか
これらの視点でしっかり点検しましょう。
転勤を避ける方法
転勤することが就業規則に定められ、かつ異動命令に不当性がない場合などには基本的に転勤を受け入れざるを得ないケースは多くなります。
ですが、家族が増えたり、子供が進学したり、親の介護が必要になったりすることで、環境が変わって転勤をしたくなくなる状況はだれにでもありうることです。
普段から転勤について意識して行動しておくことで、望まない転勤を避ける可能性が高まりますよ。
まず転勤したくない理由をしっかり考える
そもそもなぜ転勤したくないと考えるのか。その理由をしっかりと考えておくことが大切です。
転勤をしたくない理由としては、たとえば以下のようなものが考えられます。
- 子供の進学のため
- 子供に何度も転校させたくない
- 単身赴任で家族と離れるのが辛い
- 単身赴任による生活費の負担が大きい
- 家を購入したばかりで離れたくない
- 知らない土地に行きたくない
- 新たな人間関係がしんどい
- 親の介護が必要になった
人材採用のエン・ジャパン株式会社が2019年に公表した転勤に関する調査(https://corp.en-japan.com/newsrelease/2019/19867.html)によると、「条件に関係なく転勤を拒否する」と回答した人がその理由とした上位は以下のような結果でした。
条件に関係なく転勤を拒否する理由
- 配偶者も仕事をしているから 34%
- 子育てがしづらいから 34%
- 親の世話・介護がしづらいから 33%
自分がなぜ転勤をしたくないと感じているか。ここを整理することで、望まない転勤を避けられるきっかけになります。
前もって理由を伝える
転勤を避けたいなら前もって考えを整理した上で、面談などの場で上司にその旨を伝えておくのが一番の近道です。
転勤が前提となっている職場で異動を命じられてから拒否するのは得策とは言えません。会社側の印象が悪くなり、評価に響く可能性があります。
事前に介護や育児など正当な理由とともに転勤は避けたいという意志を伝えておくと、一定の配慮が期待できますよね。
たとえば、引っ越しを伴わない部署への異動を希望しておくのも一つの手。あるいは「2年後なら転勤できる」「遠方じゃなければ可能」といったように前提を設けておく方法もあります。
大切なのは異動を命じられてから慌てるのではなく、事前に転勤を想定して行動しておくことです。
上司と打ち解ける
意に沿わない転勤を避けるコツ。そのひとつは上司と打ち解けることです。
「そんなことまでしたくない」
「嫌な上司と仲良くするなんてごめんだ」
こう感じる方もいるでしょう。
上司と打ち解けるというのは、嫌な上司にがまんしてこびることではありません。
打ち解けるために必要なこと。それは精一杯はたらき、結果を残すことです。あなたが良いはたらきをすることで上司自身の評価が高まります。上司は貴重な戦力のあなたを手放したくなくなりますよ。
または、いずれ一緒にはたらくときにまたチームの評価をたかめてくれることを期待して、あなたの意に沿わない人事は避けてくれる可能性が高まります。
上司は使われるばかりではなく、信頼できる上司を見極めてこちらも良い意味で活用してやろうという意識がたいせつです。
異動を告げられる前から、しっかりと自分の意思を伝えておくことで、意に沿わない転勤が避けられる可能性があります。
転職を検討する
あなたが今いる会社が転勤を前提とした会社であり、転勤したくない理由を伝えても聞き入れられない可能性が高く、どうしても転勤はしたくない場合。転勤を検討してみましょう。
ただ、その前に考えることがあります。
そもそも転勤制度には、従業員が長期間同じ環境で働くことで社内外で不正が生じる恐れを排除したり、組織を活性化させたりするためという側面もあるのです。
このほかに、人材育成上、将来の幹部候補を育成する観点からさまざまな部署や地域、環境で経験を積んでもらう狙いもありますよね。
つまり、あなたが転勤を伴う異動の対象となっているのは、期待の裏返しという面もあるのです。
会社に残ることで得られるメリットと、転職することで得られるメリット。両方をしっかり考慮してそれでも転勤がない仕事につきたい場合に転職へ歩を進めましょう。
転職を検討するなら、さまざまなキーワードで転職先を探せる転職サイトと、専門のアドバイザーと二人三脚で転職活動ができる転職エージェントの両方の機能を持つdoda(デューダ)がおすすめ。業界トップクラスの求人数で希望の転職先を見つけましょう。
転勤がない仕事
具体的に転勤がない仕事を探してみましょう。転職サイトと転職エージェントのサービスが一体となっている転職サービスのdoda(デューダ)で「転勤なし」で検索してみたところ、13,000件以上の求人がヒットしました。
「転勤なし」の職種の例
- ITエンジニア
- プログラマー
- 広告コンサルティング
- 採用コンサルティング
- 飲食店店長
- 製造オペレーター
- タクシー運転手
- 住宅営業
- 不動産売買仲介営業
- 保険営業
技術系や管理職、ドライバー、営業職など幅広いです
転勤がない仕事としては、人事や総務、経理といった管理系部門、あるいは、教育・医療・福祉といった地域に根ざした仕事も考えられます。
地方公務員や中小企業など、そもそも転勤する勤務地がない仕事を狙うのもおすすめです。
転勤がない仕事のメリットとデメリット
転勤がない仕事のメリットとデメリットを確認しておきましょう。
転勤がない仕事のメリット
マイホームを購入しやすい
転勤が控えていると分かっていると戸建てや分譲マンションの購入に踏み切れない人は多いですよね。
家族がいれば単身赴任となる可能性があったり、人に貸さないといけなくなったりします。どちらにしても何千万円という住宅ローンを抱えて買った目的からは離れます。
僕も転勤で離れざるを得なくなったマンションを新築から4年ほどで人に貸したことがあります。次に住むとき、最初に住んだときに感じた喜びは当然なくなりますよね。
転勤がない仕事なら、気に入って買った家にずっと住めるのが大きなメリットになります。
家族と一緒にいられる
転勤があると単身赴任で家族と離れなくてはいけなくなることがあります。
年老いた親の介護であったり、子供の進学であったり、パートナーの仕事のためであったり、さまざまな理由で。
転勤がない仕事につくことで、家族が離れる切ない思いをすることが減ります。何かあったときに駆けつけられない。そんな辛い思いをすることは避けたいです。
単身赴任中の夫婦が離婚する確率は同居夫婦よりも多いと言われています。生活の距離が心の距離まで広げる可能性は排除したいですよね。
親戚や友人との関係が深くなる
転勤族が困るのは親戚や地元の友人との関係が疎遠になることです。お盆や正月、ゴールデンウイークに帰省できればいいですが、仕事や学校行事などの都合でうまく家族のスケジュールが合わないこともあります。
帰省できたとしても余裕がなくて友人や親戚への挨拶は難しい場合が多いのではないでしょうか。僕がそうでした。
転勤がない仕事であれば、普段から連絡を取り合うことができます。SNSで見知らぬ人との接点は増えましたが、昔ながらの身近な縁も大切にしていきたいですよね。
転勤がない仕事のデメリット
転勤がある仕事より給料が下がりやすい
転勤先が各地域にあるということは、規模が大きい企業であることが多いです。規模が大きいと給与水準も高いですよね。
転勤がない仕事を選ぶのは給料水準が低くなる可能性があることは念頭に入れる必要があります。
もちろん専門性が高い職種であれば収入も高まりますので、転職先を探す場合は自分のスキルをしっかり見極めていきましょう。スキルの見極めは無料でコンサルティングしてくれる転職エージェントの活用がおすすめです。
いろいろな地域を知らないままになる
転勤族の醍醐味はいろいろな地域のくらしや文化に触れられることです。生まれ育った地域以外で生活することで視野が広がり、人脈も大きく増えます。
転勤がない仕事に就くということは、住んでる地域しか知らないことを意味しますよね。観光などで訪れるのも楽しいですが、やっぱりさまざまな地域で過ごした思い出や人とのつながりはいつまでも残ります。
できれば避けたい人間関係が続く
転勤がないことによる大きなデメリットは、会社内や近所づきあいで、つきあいたくない人との関係が延々と続く可能性があることです。
転勤することで職場環境は一新され、となり近所や子供の学校関係の付き合いもガラッと変わります。
人間の大きなストレスの原因のひとつは人間関係にあります。
厚生労働省の令和元年国民生活基礎調査(https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa19/index.html)によると、悩みやストレスのある15歳以上の人(仕事あり)のうち、最も気になる悩みやストレスの原因の上位は以下の通りでした。
最も気になる悩みやストレスの原因の上位(単位は件)
- 自分の仕事 9993
- 収入・家計・借金等 4574
- 家族の病気や介護 2029
- 自分の病気や介護 1636
- 家族以外との人間関係 1530
- 家族との人間関係 1316
- 子どもの教育 955
- 総数 30855
お金や健康に直結することに続いて人間関係が入っています。転勤によってそのわずらわしさから解放されるのをメリットと感じ、逆に転勤がないデメリットと思う人は多いでしょう。
転勤したくたいと転職の面接で伝えるべきか
転勤したくないから転職活動をする、またはしている場合、そのことを面接などで伝えるべきか。結論を言えば第一の理由にはしないことをおすすめします。
採用する企業の立場にたってみます。一番の志望動機が「仕事内容に魅力を感じた」という人と、「転勤がないことに魅力を感じた」という人だったらどちらを採用したいと思うか。
同じ能力の2人がいたとしたら、やはり仕事内容に魅力を感じてくれている人の方が良い仕事をしてくれると感じるでしょう。
転勤は絶対したくないから一生懸命働くとばかりに良い仕事をする人だっているかもしれませんが、第一に訴えなくてもいいですよね。
一方で、あなたの出発点として「転勤したくない」ことが動機となって転職活動をしているので、「転勤あり」の企業は除外されているはずです。
それでも中には将来の事業拡大を見据えて転勤が発生することを想定する会社があるかもしれません。面接で転勤の可能性があることを突然告げられたときの対応は難しいですが、転勤がないことが第一の理由とはしないまでも、入社後のトラブルや行き違いを防ぐため、自分の意思は正直に伝えるのが無難でしょう。
【転勤したくない】まとめ
転勤は仕事のスキルや人生経験に広がりを持たせる意味でメリットもたしかにあります。
でも今の生活や将来の自分の人生が大きく変わる可能性もあるのは事実。それは良い方向かもしれないし、悪い方向かもしれません。
僕の場合は転勤先で今の妻と出会い、2人の子供にも恵まれました。転勤がない人生だったら少なくとも今感じる幸せはありません。
ただどのような人でも年を重ねるごとにライフサイクルは変わります。かつては転勤族の暮らしが性に合っていたけど今は合わない。その逆もあるでしょう。
転勤を避けたい場合、内示を受けてから焦るのではなく、事前に想定して準備しておくことが大切です。
どうしても転勤が避けられなさそうなら転職やフリーランスになるなど別の道も視野に入れる。あるいは別の道を検討できる力をつけるべく副業に取り組むのもおすすめです。