【経理の仕事・業務はなくなるの】 ＡＩに代替される可能性と本当の将来性

1990年代後半から20年ほどの間に世の中に急速にパソコンが普及し、AI(人工知能)やIOT(モノのインターネット)が進化しています。

かつて手作業で行っていた仕事は機械化が進み、事務作業はシステム化が進みました。

しかし、経理や一般事務をはじめ、近いうちに機械に置き換えられると言われた仕事は今なお、会社に必要とされて存在します。本記事の結論を言えば、経理の仕事すべてが会社から不要になることはありません。

もちろん、データ入力など単純作業や反復作業は、効率化のため機械への置き換えが進むでしょう。

厚生労働省が毎月発表している雇用統計によると、事務的職業における2021年の新規求人倍率(パート除く)は0.65倍でした。

新規求人倍率は、ハローワークに企業から寄せられた新たな求人の数を、新たに求職者の登録を行った人の数で割った値です。数値が１を超えて大きくなるほど雇用環境が良いと言えます。

新規求人倍率＝新規求人数÷新規求職者数

事務的職業の雇用環境は決して良いとは言えませんが、会計事務に限れば1.01倍と１倍を超えています。

会計の理屈を理解した上で会社全体を俯瞰(ふかん)しつつ、経営のサポートができるような、機械で置き換えができない人材の重要性は変わりません。

この記事では、経理の仕事のどの部分が残り、どの部分が淘汰されるのかを見ていきます。そのうえで、機械との代替が指摘される業種も確認しながら、どのような人材を目指すべきか考えたいと思います。

それではよろしくお願いします！

【経理の仕事・業務はなくなるの】ＡＩに代替される可能性

経理の仕事とは

経理が行う仕事の目的は、１年間の経営成績を表わす決算書を作成することです。決算書を作りながら収入や支出、利益を確定し、税金や配当金などの額を決定していきます。

決算書は正式には財務諸表と呼ばれます。財務諸表は、会社の資産と負債、資本の残高を示す「貸借対照表」、売り上げから経費などを差し引いた利益を計算する「損益計算書」、お金の流れを説明する「キャッシュ・フロー計算書」が主な書類です。

上場企業をはじめ有価証券報告書の提出が義務付けられている企業は、貸借対照表、損益計算書、キャッシュ・フロー計算書の作成義務があります。経理担当者はこれら財務諸表を作成するため日々、売上や仕入れの管理、給与や社会保険など人件費の計算、税金額の確定などを行っているのです。

AIが代替できる経理の仕事

企業活動を行っていく中で発生するお金の動きは、領収書や請求書などの書類をもとに営業などの一般社員、あるいは経理部員が伝票を起票することで記録されていきます。

経理部員は、領収書や請求書といった確認書類と伝票を照合したり、お金の動きを伴う取引が会議費や交際費といった勘定科目に正しく仕訳されているかなどの確認を行ったりします。

こうした一連の作業を見ると、領収書や請求書などの書類を元にした伝票作成はAIでも代替できますよね。

書類をスキャンで読み取って、過去の取引例に照らし合わせて仕訳をしていけばいいわけです。機械が行えば照合作業で人手を割く時間も大幅に減ります。

また、一般社員が経費の精算方法などについて疑問に思った際、これまでは経理部員に電話やメールで確認していましたよね。

このケースでは、過去の事例を読み込んだAIによる自動応答を導入すれば、疑問に持ったときに即座にチャットボットで問い合わせに回答できる仕組みとなって人手を軽減できます。

以上のような単純かつ反復する作業は、比較的容易に人手から機械に移行できます。

AIが代替できない経理の仕事

一方で、AIでは現時点で代替が難しい業務があります。

資金繰りなどの分析・予想

適切な会計処理を経た資料をもとに、業界の環境、社会経済情勢などを踏まえて自社の経営状況や資金繰りなどの分析・予想を行うことも経理部門の重要な業務です。

売り上げが減少している要因や、コストが上昇している背景、資産や負債は適切なバランスになっているか……。中小零細だったらこれらの分析は経営トップ自ら行う場合もあるでしょう。

ただ、お金の流れをみる専門家として経営陣をサポートする役割は、ＡＩが普及しても簡単にはなくならないでしょう。

勘定科目の振り分け判断

会計処理を行っていると、機械的には行えない判断を伴う仕事もあります。

たとえば、決算期に経理部員がいそがしくなる一因となっている期ズレの問題です。

税金が正しく計算されているかを確認する税務調査では、売り上げや費用の期ズレが厳しくチェックされます。

もとになっているのは会計原則の損益計算書原則にある「発生主義」。現金の動きではなく、収益や費用が動く事実が発生した時点で計上するという考えです。

決算期が３月の企業で、お金を支払うのが４月以降だとしても、商品を仕入れたりサービスを利用したりしていれば、３月期の費用として計上することになります。売り上げも同じです。代金を受け取っていなくても、商品を納めた時点で売り上げとして計上します。

発生主義の他にも、期ズレが生まれる要因として、当期に発生した費用を、その期の収益に対応する費用と、来期以降の収益に対応する費用にわける「費用収益対応の原則」があります。

売り上げと費用を計上する期がずれると、利益額が変わり、すると税額まで変わります。ひとつ間違えば大きな額の変動を伴い、税務調査で指摘を受けて罰金を科されることになりかねません。

これらの判定をすべてをAIに委ねるのは難しく、最終判断を行う、あるいは確認を行う専門家としての存在感は続くでしょう。

コンサル的役割も

決算業務で数値が整理された資料をもとに、経営者は今後の事業戦略を考えます。

経理や財務を担う部門は、これまでのお金の動きと今後の予想をもとに経営者に改善点などを助言する役割が期待されています。現時点ではAIには代行できない仕事です。

【経理の仕事・業務はなくなるの】本当の将来性

経理の仕事の将来を考えると、将来性がある部分と将来性はない部分とに分けられます。

将来性がないといえるのは、機械でも代替できるデータ入力をはじめとした定型的な単純作業。一方で、将来性があると考えられるのは、さらに高度な仕事。つまり、これまで見てきたように経営の中枢と深くかかわる分野ですね。

以下のような知識や思考は経理の仕事の将来性を大きくする部分です。

財務の知識

財務の仕事は企業が事業活動を行う上で欠かすことができない資金調達を担う部門です。

調達したお金を事業や運用に活用してどれだけ増やすことができるかを考えていきます。

税務の知識

国の税制の変化はとても速い。変遷する税制に沿いながら、節約する方法を考えるのも経理の大事な仕事です。

逆にちょっとしたミスで税務調査で指摘を受け、罰金を科せられることだってあります。

自社や業界の実情に合わせた税制への対応を常に学ぶ意識の高い人なら、経理の将来性など気にする必要はないかもしれませんね。

経営者思考

経理がおもしろいのは、お金という会社経営の根本に関わるスキルが得られることです。

経理業務に取り組むことで、会社経営のおもしろさを学べます。一般のサラリーマンには味わうことができない点かもしれませんね。

【経理の仕事・業務はなくなるの】将来なくなるとされる他の職業

最後に、経理以外に将来AIやロボットに仕事が代替される可能性が高いとされる仕事の例をみておきましょう。

もとなるのは、2015年に野村総合研究所が発表した資料（https://www.nri.com/-/media/Corporate/jp/Files/PDF/news/newsrelease/cc/2015/151202_1.pdf）です。

イギリスのオックスフォード大学の研究者との共同研究で、国内 601 種類の職業について、人工知能やロボットにとって替わられる確率を試算したものでした。10～20 年後、日本の労働人口の約 49％が就いている職業で代替が可能と推計されています。

発表時には衝撃を呼びましたが、それから10年近くたってもまだたくさんの仕事が残っています。ただし、最近のIT技術の進化は2015年の比ではありません。将来への継承として参考にしておきたいですね。

【経理の仕事・業務はなくなるの】まとめ

経理の仕事は一見地味に見えますが、企業活動の中でとても重要な役割を果たしていることが分かりますよね。

単純作業はいずれ機械に置き換わる。それは経理の仕事に限るものではありません。重要なのは機械ではできない仕事はなんなのかを考えていくこと。

経理の仕事に興味をもった方は、転職エージェントでアドバイザーと相談しながら自分の適性を見つめ直し、挑戦してみるのもいいと思います。

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