昇給5,000円は少なすぎないか?
もっと上がればやる気もでるのに
こんな疑問や不満に答えます。
物価は上がっても賃金は上がりにくい。このような状況が続く中、どうするべきか。
この記事は昇給を5,000円以下からもっと増やしていきたい人に向けて書いています。
まず認識しないといけないのは、昇給が何年も5,000円にとどまる会社では、いくらがんばっても大幅アップは厳しいという現実です。
厚生労働省の令和3年「賃金引上げ等の実態に関する調査」によると、常用労働者 100 人以上の 1,708 社に聞いた1人当たりの賃金アップ額の平均は、1.6%増の4,694円でした。前年は1.7%増の4,940円。いずれも5,000円にとどいていません。
かつて、平成元年から4年までは1万円を大きく超えていました。でもそれは平成初期、あのバブル景気の話です。
日本経済の低迷が続くなかで、昇給を5,000円から大きく伸ばしていくには、成長産業や大手企業に移ったり、副業や起業に挑戦したりするなど新たな一歩が必要になります。
この記事では給料が上がらない背景や収入を上げる考え方などを解説します。ぜひ参考にしてください。
手っ取り早く収入を上げるには転職が効率的です。そして転職活動をスムーズに進めるなら、アドバイザーの助言を受けながら自分の経歴やスキルに合った企業を探してもらえる「転職エージェント」の利用がおすすめです。
昇給5,000円は低すぎるけどあくまで平均
厚生労働省の統計によると、1人あたりの賃金アップ額の平均は、12,939円だった平成4年を最後に一度も1万円を超えていません。
つまり、「昇給5,000円」という金額は、今の日本企業の間では必ずしも低すぎるとは言えないのです。
「昇給5,000円」はあくまで平均値。企業の規模や年頼、さらには個人によって変わります。
世代で異なる昇給額
厚生労働省の賃金構造基本統計調査で公表されている年齢別賃金データを比べてみました。
令和3年と2年の比較では下のグラフのようになっています。
賃金が前年より増えているのは20歳~34歳までの年齢層と、60~69歳までの層。
近年は人手不足が深刻です。特にもともと人口が少ない若い世代の確保はどこの企業も苦心してます。
このため、40代、50代の賃金上昇を抑え、若い世代に報いる動きが出ているのです。
一方で、従来ならリタイアしていた60歳以上の働き手も、人手不足を補う貴重な存在として重視されており、賃金上昇の動きが出ていることがみてとれます。
あおりを受けているのが40~50代です。特に40代は子どもの教育費が増える時期。年功序列で安く抑えられてきた賃金がこれから上がり出すタイミングでもあっただけに、落胆している人も多いのではないでしょうか。
いまの40代は先輩が多くてポストが少なく、現場で働き続けるプレーイングマネジャーが多いですよね
業種や会社規模で異なる昇給額
厚生労働省の令和3年「賃金引上げ等の実態に関する調査」によると、1人あたりの賃金アップ額の平均は4,694円でした。
これを従業員の人数別で見ると以下のようになります。
令和3年の従業員数別1人あたりの平均賃金アップ額(かっこ内は令和2年)
- 5,000人以上 5,202円(6,086円)
- 1,000~4,999人 4,937円(4,925円)
- 300~999人 4,753 円(4,805円)
- 100~299人 4,112円(4,315円)
大企業ほど昇給額が高く、中小企業ほど低いのがはっきり表れています
日本の企業のうち中小企業の割合は99%以上、中小企業で働く人の割合は7割程度に上ります。
平均値は昇給額がとびぬけて高い人がいれば上昇方向に引っぱられがち。中小企業が多いということはつまり、昇給は5,000円はどころかマイナスの人も少なくないのが実態なのです。
さらに、業種でも昇給額に大きな開きが生じています。
上のグラフは業種別の昇給額を比較したものです。
令和3年に最も昇給額が高かったのは建設業で6,373円。情報通信業が6,028円と続きました。
一方で、医療・福祉は2,855円と全業種で最も低く、生活関連サービス業・娯楽業の2,915円が2番目に低い結果となっています。
昇給が高い業種、低い業種は例年同様の傾向にあります。一定の技術や経験が必要な仕事は恵まれており、単純作業など比較的代替可能な仕事は昇給が抑えられる傾向にあるのです。
個人で差が出る昇給額
昇給とは働く人の給与が増えることをいいます。ボーナスのように会社の業績によって上がるものではなく、あくまで毎月の給与が上がることを指します。
昇給制度がある会社の多くは定期昇給制度を設けています。年齢や仕事の成績、勤務態度などによって定期的に決められるものです。
昇給制度があれば就業規則にルールが定められているはず。企業ごとに異なるのでしっかり確認しましょう
定期昇給は、会社の業績アップで全従業員の給与水準を底上げするベースアップとは異なります。定期昇給による給与の増額は年齢や仕事の成果で差が付けられることもあるのです。
昇給はなぜ5,000円止まりなのか
バブル景気のころに毎年1万円を超えていた平均昇給額がどうして5,000円程度にとどまるようになったのか。それは主に次の理由です。
- 日本の景気が悪いから
- 業績が低迷しているから
- 労働者が搾取されているから
ひとつずつみていきましょう。
日本の景気が悪いから
日本の景気はパッとしません。内閣府が公表しているGDP統計によると、物価変動を除く成長率は昭和63年の7.1%をピークに下落傾向にあります。
ゼロ付近を行ったり来たりしている状況です
GDPとは国内総生産のこと。つまり、国内で新たに生み出されたモノやサービスの付加価値の合計です。言ってみれば国民の経済活動の成果を表わしたものですから、日本は長い間大きく成長していないことを示しているのです。
昭和60年のプラザ合意をきっかけとしたバブル景気で日本はフィーバーしました。そもそもプラザ合意はドル安の状況を生み出して米国の輸出競争力を高めるための施策です。
過度の円高で輸出競争力が低下した日本の輸出産業を守るため、日銀は金利引き下げを行いました。お金が国内で循環するようになり、株や不動産などの資産価格が急騰したのです。
これがバブル景気の正体です
要するに、生産性向上や新技術など根本的な成長を基盤にした売り上げアップではない企業が多かったということ。このため、バブル崩壊後、長い低迷期に入り、今も抜け出せていないのです。経済が成長しないことには給料も上がるはずはありません。
業績が低迷しているから
会社自体が成長していれば、日本経済が低迷していたとしても昇給は期待をこえるかもしれません。
しかし、会社の業績が低迷している場合はどうでしょう。ほかの仕事をしている知人や友人の給与は上がっているのに、自分は据え置きあるいはそのままということもあり得ます。
仕事への意欲が失われた社員が増えると業績が回復する余地も小さくなります。
- 外部環境の改善
- 営業方法の見直し
- 成長分野への投資
- コスト削減
さまざまな経営改善策が考えられる中、経営者はしっかり対策を進めているか。僕たち働く側は、昇給が今後あり得るのか、しっかり確認したいですよね。
労働者が搾取されているから
日本経済は好調、会社の業績も上がっている。なのに給料が一向に上がる気配がない。このような場合には労働者が搾取されている可能性があります。
バブル経済が崩壊した後、日本は「失われた30年」といわれる状態に陥りました。経済成長が見込めなくなり、経営者も労働者も弱気になっています。
一度上げた給与を引き下げるのは、働き手の意欲を激しくそぐので難しい。このため、会社側は業績が良くなっても給与水準を大きく引き上げようとしなくなります。
これがバブル後の昇給がしょぼくなった大きな原因です
財務省の法人企業統計によると、2021年度の企業の内部留保(利益剰余金)は前年度比6・6%増の516兆4750億円と初めて500兆円を超えました。
会社は利益を人件費や成長に向けた設備投資に充てるより、ため込み続けているのです。
内部留保は将来の成長に向けた投資に充てるべきなのにため込んでいるばかりでは昇給も見込みにくいですよね。
なかなか昇給しないのに会社がためこんでいるばかりになっていないか。しっかりチェックしたいですね。
昇給5,000円から収入を増やす方法
日本経済が伸び悩んでいても、しっかり昇給の恩恵を受けている人はたしかにいます。これまで昇給5,000円にも届かない人たちはどう動くべきなのか。その方法を4つ紹介します。
- 成長産業に転職する
- 大手企業に転職する
- 副業に着手する
- 起業する
ひとずつ解説します。
成長産業に転職する
この記事でも先ほど触れたように、昇給額は業種によって大きく異なります。
景気動向にも左右されますが、令和3年の平均昇給額では、最高の建設業(1人当たり6,373円)と最低の医療・福祉(同2,855円)では2.2倍もの差が開いています。
平均でこの差ですから、企業や個人で見るともっと大きな開きが出る可能性があります
全15業種のうち昇給額ベスト5とワースト5は以下のとおりです。
平均昇給額ベスト5
- 建設業 6,373円
- 情報通信業 6,028円
- 学術研究,専門・技術サービス業 5,743円
- 鉱業,採石業,砂利採取業 5,733円
- 製造業 5,355円
平均昇給額ワースト5
- 医療,福祉 2,855円
- 生活関連サービス業,娯楽業 2,915円
- 金融業,保険業 2,951円
- 宿泊業,飲食サービス業 2,996円
- サービス業(他に分類されないもの) 3,199円
ベスト5とワースト5をみると、企業や団体を相手にビジネスをする業種の昇給額が高く、消費者を直接相手にやりとりする業種の昇給額が低いことがはっきりと出ています。
つまり、高い昇給を目指すなら企業を直接相手に事業を行う業種が狙い目ですね。
給料水準と昇給額が高い業界に身を置いてスキルを磨くのが、長く高水準の収入を得る近道になります。
大手企業に転職する
中小企業に属していれば、大手企業に転職するのも昇給額を引き上げる手段です。
厚生労働省の令和3年「賃金引上げ等の実態に関する調査」によると、1人当たりの賃金アップ額の平均は企業規模で明確に差があります。
従業員5,000人以上の企業は5,202円だったのに対し、100~299人の企業は4,112円にとどまっています。
大手企業は中小企業よりも知名度や宣伝力が強く売り上げ規模も大きくなるし、仕入れ面でも販売力を背景により安く買い入れる交渉が可能です。
競争力の差は昇給だけでなく給与水準そのものにも出ます
厚生労働省の令和3年の「賃金構造基本統計調査」によると、企業規模別の賃金は以下のように差が出ていました。
企業規模別の賃金(男女計・男性・女性の順)
- 大企業 339.7千円 375.9千円 271.0千円
- 中企業 299.8千円 328.0千円 252.5千円
- 小企業 279.9千円 303.6千円 235.0千円
※常用労働者1,000人以上を「大企業」、100~999人を「中企業」、10~99人を「小企業」に区分
従業員として昇給を期待するなら大手企業の方が可能性が高いということは明らかです。
副業に着手する
いや、いきなり転職なんてできないよ
こう思うなら、副業で自分のスキルを磨くこともおすすめです。
実際、僕は個人で稼ぐ力を持つ必要性を感じてきたので副業に取り組みはじめました
副業は政府も推進しています。
副業・兼業は、新たな技術の開発、オープンイノベーション、起業の手段や第2の人生の準備として有効とされており、「働き方改革実行計画」において、副業・兼業の普及を図るという方向性が示されています。
「副業・兼業の促進に関するガイドライン」
10,000円の昇給が難しいなら月10,000円の売り上げがでる副業を始めればいい。このように考えてみましょう。
パーソルイノベーション(東京)の副業仲介サービス「lotsful(ロッツフル)」が公表した副業に関する調査結果では、副業で得る平均月収は5万円未満が23.4%と最も多くなっています。
30万円以上40万円未満というツワモノも10.8%もいましたが、多くは数万円です。
副業をはじめたきっかけでは「収入の変化があったため」が21.9%と最も多く、「キャリアについて考えた」と「周囲の影響があった」が18.4%と同率で2番目でした。
みな、危機感を抱いて副業に挑戦しています
調査結果からも分かるように、月10,000円の副業収入を得るのはそこまで高いハードルではありません。大きなコストがかからずチャレンジできる副業もたくさんありますよ。
起業を目指す
副業が軌道に乗れば、起業の道が見えてくる人もいるでしょう。
特に僕も含めて40代は大量にいる50代の先輩社員や、これからを担う20代、30代に挟まれた世代。以前なら期待された年功序列の恩恵も受けられず、昇給も覚束ないですよね。
副業しやすい企業に転職し、コツコツスキルを磨いていずれ独立する。こんなビジョンを持っている人も多くなっています。
昇給5,000円に届かないならブラック企業の可能性
長時間労働を強いられ、ムダに多いリアルの打ち合わせに何度も呼ばれ、仕事の割り振りもおかしい。そのうえ何年も働いているのに昇給5,000円にも届かない。それはブラック企業である可能性が大です。
そのような環境にいる人が人生を好転させる対策は、
- 転職エージェントを活用してブラック企業以外に転職
- 退職を止められそうなら代行サービスを活用
- 残業がない会社で副業に挑戦
以上を意識していきましょう。
転職エージェントを活用してブラック企業を避けて転職
転職エージェントは転職希望者と求人企業の仲介役。業界事情や求人動向に詳しいアドバイザーが転職活動を無料でサポートしてくれるありがたい存在です。
もちろん、エージェントの中にはブラック企業も紹介してくるところがあります。転職エージェントの収入は就職が決まったときに企業側から受け取れる報酬だからです。
こうしたリスクは、信頼性が高い大手エージェントを使ったり、常に求人がある企業を避けたりするなど対策をとることで避けられます。
業界大手の転職エージェント「doda(デューダ)」では、「原則定時退社」や「残業20時間未満」など転職希望者が安心してさがしやすい検索条件も用意してくれています。
試しに「原則定時退社」で検索すると15,000件以上ヒットしました
dodaは自分のペースで転職先を探せる転職サイトとしての機能と、アドバイザーから助言を受けながら活動できる転職エージェントの両方の機能を合わせ持っているのも特徴です。
利用も登録も無料ですので、ぜひ登録することをおすすめします。本気で転職を考えている場合は転職エージェントは3社くらいに登録しておくと、情報収集の幅が広がり効率的です。
退職を止められそうなら代行サービスを活用
ブラック企業の場合、退職を希望した途端に引き止め工作をしてくるかもしれません。人が次々と辞めていく中でどうしても人手不足は回避したいからです。
そのような場合には退職代行の活用を検討します。退職代行はその名前の通り会社を辞めたい人の代わりに退職の意思表示をしてくれるサービスです。
民法によれば、雇用期間の定めのない労働者は2週間前に退職を伝えれば会社を辞めることが可能です。
残っている有給休暇が2週間以上なら、会社に行かずに退職するのもあり得ます
このため、退職代行を使う必要がない場合も多いのですが、ハラスメントが横行するブラック企業の場合は、辞めると言いにくいケースもありますよね。
退職代行サービスを行うガーディアンは、東京都労働委員会に認証されている合同労働組合です。法律にのっとって会社側と退職交渉をしてくれるので、違法性なく安心かつ確実に退職できますよ。
残業がない会社で副業に挑戦
転職活動の結果、残業がない会社に移れた場合、生まれた時間で副業をするのがおすすめです。
人口減少が続くなかで、経済も給料も右肩上がりになる社会はイメージしにくいですよね。
労働者は会社の給料だけでなく、副業で収入を得るのがスタンダードになる可能性があります
本業の合間に行う「副業」ではなく、複数の仕事をこなすことを意味する「複業」という言葉も出てきています。
少子高齢化で将来の年金不足などの不安が強まっている時代です。もし副業や複業で月に5万円の収入を得て、そのまま投資信託でつみたてた場合のシミュレーションを金融庁のサイトでしてみました。
月5万円を積み立てて利回り3%で運用した場合の最終積立金額
- 10年後 6,987,071円
- 20年後 16,415,100円
- 30年後 29,136,844円
10年後に約100万円、20年後に400万円超、30年後には1,000万円以上、元本より増えている可能性があります
複利の力で本業以外の収入を月に5万円得て積み立てるだけでこんなに資産が膨らむのです。
やらない手はないですね。
【昇給5,000円は低すぎる】稼ぐ力をつけていこう
総務省の家計調査によると、10年前より「基礎的支出」は8万円も膨らんでいる一方で、「選択的支出」は12万円減少しています。
基礎的支出とは、食料や家賃、光熱費、保健医療サービスといった必需品的な支出。選択的支出とは、教育費や教養娯楽用耐久財、月謝類など比較的余裕があるときにされる支出を言います。
物価が上がって必要な出費が増えるなかで、楽しみや将来につながる支出を抑える。
そんなガマンを強いられているのが僕たち労働者の実態です
昇給5,000円にも届かないのではいまの暮らしも将来設計もきびしい。そのような考えにとらわれてきた人は収入を増やすため、転職や副業に着手するべきです。
転職エージェントは登録も相談も無料。アドバイスを受けていく中でスキルの見直しにも役立ちますよ。